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スライディング・ヘディングシュート2


3000坪の冒険と、時々音楽すごく映画。たまにサッカー
by frat358
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ブロードウェイ・ブロードウェイ(超ネタバレ)

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舞台には沢山のテープが貼ってあります。
機材の設置場所を意味するテープ、
客席から舞台袖を見た時に
どの位置まで見えるかを示すテープ、
役者の立ち位置を示すテープ、などなど。
なかでも有名なのが、メインキャストではない脇役が
これ以上前に出てはいけない、という意味の、線。
俗に「コーラスライン」と呼ばれます。
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そんなコーラスラインで踊っていた脇役のダンサー達に
インタビューをして、そのインタビューを題材にして
「コーラスライン」というミュージカルが生まれました。
1975年に元ダンサーで振付師のマイケル・ベネットが企画、
初演されて大ヒット。このドキュメント映画は2006年に
復活したコーラスラインのオーディションを撮った映画です。
コーラスラインというミュージカル自体も
脇役たちのオーディションが物語になっているので、
このドキュメント映画はある意味で
リアル・コーラスラインと言えそうな作品になりました。
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コーラスラインを音楽担当したのは、
当時映画界で高い評価を得ていた
マーヴィン・ハムリッシュという人です。
彼はアカデミー賞を取った後、
人生で一番幸福だと思える時期に
マイケル・ベネットから
「全て捨てて来い。頼みたい舞台音楽がある」
と電話で口説かれ、本当にそのようにして
コーラス・ラインの音楽を作ることになります。
彼は去年亡くなりました。
エミー賞、グラミー賞、アカデミー賞、トニー賞、
ゴールデングローブ賞、ピュリツァー賞。
アメリカの主要な賞を全て獲得した
世界で唯一の作曲家でもあります。



「コーラスライン」は音楽もストーリーも
舞台を原案にして1985年には映画化。
劇場という密室空間の芸術でありながらも
一般的に広く知られた作品でもあります。
ブロードウェイ・ブロードウェイ(超ネタバレ)_c0027929_2244987.jpg

企画者であるマイケル・ベネットは
ダンサーの世界でエリートでした。
でもダンサーというのは老いていくと体力が持たないので
最高の転職の場として「振付師」というのが存在します。
マイケル・ベネットはダンサーとしても評価され、
振付師としても評価されたエリートの中のエリート。
でも彼は、脇役として扱われていた仲間たちに
強く興味をもちました。
ブロードウェイ・ブロードウェイ(超ネタバレ)_c0027929_22174342.jpg

現場に居ない人達は、バンドであれ舞台であれ
映画であっても脇役達を大きく評価しません。
でも現場は違います。
美術、演出、メイク、衣装、舞台設置などなど
どんな役割でもプロ意識の高い仕事をしていれば、
信頼や尊敬、相手を認める関係があります。
バンドの世界でも相手を見下す関係というのは
滅多にありません。仕事はきついですが
それをやり遂げる人間は評価されます。
マイケル・ベネットが自分の後ろで踊っていた人達に
興味を持ったというのも、現場の世界で考えれば
そんなに珍しい発想じゃないかもしれません。
でもそれを作品にしよう、となれば話は変わってくる。
なにしろ観客が最も興味を持たない人達を
主役にしたミュージカルを作るんですから;
かなりの大冒険だったと思います。
そんな「コーラスライン」は6137公演の
超ロングラン公演となり、「CATS」に抜かれるまで
ブロードウェイの最長記録でした。
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そしてコーラスラインはダンサー達の中でも
特別な舞台だと考えている人が多いようです。
最初の公演の時に子供だったダンサー達が
大人になっていったのが1つと、
伝説のロングラン公演である事も理由ですね。
あとは・・・楽曲の素晴らしさが大きいかなと
勝手に思ってたりしますが。
これこそ「私達の物語」と考えているダンサーも
少なくありません。ミュージカルの金字塔です。
いま考えてみると「アメリカン・アイドル」などの
オーディション番組はコーラスラインに通じる部分があります。
夢を追う人たちの人間性にスポットを当てて、
飛躍するにせよ落選していくにせよ、その姿を撮り続ける。
ドキュメントのほうも、オーディションに参加した
ダンサー達を追いかけていく訳ですが・・・
ちょっと編集が甘いのかな。
もっともっと深く知りたいダンサー達が沢山いたし。
コーラスラインという作品の歴史を辿りながらの
ダンサー達のドキュメントなので、バランスはいいけど
ちょっと、どっち付かずに中盤あたりからなってたし。
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それでも印象深いダンサーは多いです。
2つの役の候補として最終審査まで残った女性。
父親もダンサーだったのですが、父は大怪我で引退。
彼女の父親が言うんです。何が起こるかわからない。
ある日突然、夢が終わってしまうかもしれない。
だから最大限の力を見せなさいと。
でも彼女は最後の最後で落ちてしまいます。

気の強いキャラクターの最有力候補だった女性も落ちます。
自分の何が評価されて残ったのか理解できないままで
最後の審査を迎えてしまった事が致命傷となりました。

完全にハマリ役と考えられていた男性も落ちます。
見事なくらいにキャラクターとリンクしていましたが、
やり過ぎて怠慢に思われたのがアウトだったかなと。

最後の最後で落ちるというのは壮絶です。
ショックから抜け出せない人、
新しい舞台でもらった役に没頭する人、
まるで気にしない人、色んな「落ちたダンサー」が
出てくる訳ですが。コーラスラインの曲には
彼らに捧げたくなるような曲があります。
What I Did for Loveという曲。
邦題は多少の意訳を含んで
「愛した日々に悔いはない」という曲名になってます。
これは別れる恋人同士と思われる歌詞なんですけど
劇のなかでは夢に届かなかった人達の思いとして歌われる。
最初に落ちた人。最後に落ちた人。最後まで落ちなかった人。
この曲は、全員が胸を張って
歌える曲じゃないかと思ったのでした。
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ちょっと余談になりますけど、コーラスラインは
一応主役っぽい役柄があります。
仕事が2年も無いベテランダンサーで、
かつてはセンタースポットを浴びていたスター。
でも年齢を重ねるにつれて役がもらえなくなり、
思い切って脇役のオーディションを受けるんだけど
ダンスが上手すぎて落ちてしまう・・・はずだった。
最初の時点で、マイケルベネットはこの役を
最後に落選するキャラとして考えていました。
そして「愛した日々に悔いはない」を
歌わせるつもりだったのではないかな、と
勝手に想像しています。うん、マイケルベネットは
少しづつ、役がもらえなくなっていく
優秀なダンサー仲間を沢山みてきたと思うんです。
その人達が突きつけられる現実と、
胸を張って舞台を去っていく仲間達の精神も
劇の中に入れたかったんじゃないかなと。
このほうがリアルだし「愛した日々に~」が
より輝いて聞こえたかもしれません。
でも劇が公開される前に、落ちるんじゃなくて
受かったほうがいいと沢山の感想を貰ったことで
脚本を変更し、受かるという話になっています。
主役の女性が最後に落ちて、「愛した日々に~」を
もし歌ったら・・・素晴らしかったろうなあ。

完全にネタバレですね;すいません。
でもこれ予告編みると誰が受かるか分かるし(笑)
まあ、多めに見てください;


by frat358 | 2013-03-15 22:08 | 超ネタバレ映画感想
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