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スライディング・ヘディングシュート2


3000坪の冒険と、時々音楽すごく映画。たまにサッカー
by frat358
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汝、殺すなかれ




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「ハクソー・リッジ」


沖縄戦で実在したアメリカ軍の衛生兵ドスさんを主人公に
実話ベースの映画だという事も話題になりました。
そして何より、沖縄戦をハリウッドで映画化した事は恐らくありません。
日本映画でも滅多に無いというか・・・沖縄戦はあまりにも凄惨なので
とても映像化できないという事情があるようです。
リアルにこだわれば、見てられない地獄絵になるし
フィルターをかけるように表現したら、それもまた批判の的になる。
日本でもアメリカでも、非常に難しい題材なのが沖縄戦です。



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沖縄の地上戦が映画で作りにくい理由として、
以前にも書きましたけど、米兵と日本兵の「距離」が
とんでもなく近かった事が挙げられます。
200メートル先から数百人が突撃してくるなら
マシンガンの乱射で全員を倒せるかもしれません。
でも例えば20メートルの距離から数十人が突撃してきて
そんな状態が何時間も続いてしまうとしたら
最新鋭の武器を持っていた米軍でも、殲滅は不可能です。
気ずけば目の前に日本兵が死ぬ気で迫ってきていて
銃を撃てるような距離じゃないとしたら・・・
何が起きるかといえば、肉弾戦になるんです。
刺し合い、殴り合い、首の絞めあいという状況が
戦場の至るところで発生すれば「乱戦」になってしまい、
パニックになって同士討ちが起きたり
戦艦からの砲撃も味方に当たったりします。
米軍は沖縄戦に勝利しましたが、凄まじい数のPTSD患者を
この戦いで生み出してしまいます。その事実は長く隠蔽されました。
敗れた側の日本兵の損害は・・・それ以上に凄惨だったと想像できます。


メル・ギブソン監督のプライベートな問題を考えると
(酒乱、妻への暴力、差別発言などなど)
見るかどうか悩みましたが。。。見ました。




汝、殺すなかれ_c0027929_23555418.jpg



ちょっと心配だったのが残虐描写の面ですが。
ほら、日本での上映用に修正を施して、柔らかい表現に規制したりとかね。
そういうのが起きるんじゃないかなーって思ってたんですよ。
比較などでチェックしてませんが、恐らく日本向けに合わせた修正は
おこなっていないと、思います。控えめに表現しても
そこら辺のホラー映画が腰を抜かすくらいに残虐描写のオンパレードです;
もう、ちょっと・・・見た事も無いくらいの地獄絵、戦争描写に挑戦してました。

言葉で表現するのも、ためらっちゃうくらいに物凄いので、
グロ描写が苦手な人は・・・見ないほうがいいというか・・・
とても正視して見れないと思います。尋常じゃないです。



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ドス衛生兵を演じたのは若手のアンドリュー・ガーフィールド。
彼は首が長くて、撫で肩で、なかなか適役が見つかりにくい体型なんですけど
今回ばかりは本当に、ハマり役だったと思います。最高のキャスティングです。
信仰心の強いドス衛生兵は、個人的な理由や信念で、武器を持とうとしません。
その考えは徹底していて、訓練でも銃を持つことを拒否します。
軍隊は全体主義の場であり、調和を乱す新兵は壮絶なイジメに遭います。
てゆうか、集団リンチです;上官が同情するほどのリンチを受けたりする。
しかしそれでもドスは考えを変えようとしない。
遂には軍法会議にまで呼ばれて・・・これ以上は予告の情報を超えるので秘密;



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人間ドラマで見せる見ごたえある前半と、見た事もないような地獄絵を見せる絶望の後半。
そんな構成になった映画でした。これがねえ・・・前半も面白いんです。
ドス衛生兵の父親は第二次世界大戦で親友が死ぬのを目の前で見ていて、
それが心に深い傷を与えてアルコール中毒になっています。
幼少期のドスが母親に言います。「パパは僕が嫌いなんだね」
すると母親が言う。「違う。パパは自分が嫌いなのよ」と。
生き残った自分を責め、友人の命日のたびに生きていてくれたらと願う死と向き合い、
その苛立ちを家庭にぶつけてしまう父親役に・・・なんと・・・



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「マトリックス」でキアヌ・リーブスと激闘を繰り広げたヒューゴ・ウィーウィングさん。
彼は順調に色んな役を貰って活躍してる人なんですけど、どーーーしても自分の中では



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マトリックスで増殖しまくってたイメージが消えない・・・



今回は久々に当たり役だったと思います。これだけ演技が出来る人とは思わなかった。
もう完全に、心が壊れてしまっている人間の役だったので
どう表現すべきかは苦心したと思いますけど・・・見てる人が同情と理解を示せるような
素晴らしい演技だったと思います。アカデミー賞の助演部門に居ても違和感ないくらい。
というか、全体的に見ると・・・彼が一番、演技が上手かったかもしれません。



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そろそろ本編の感想を自分なりに書かせてもらうと・・・
これって基本的に実話がベースになってるので、
訓練中にドスが仲良くなった兵士とか戦争中に理解し合う存在になっていく人間とかね、
そういった人達の死んでいくタイミングがさ、
いわゆる「映画」のタイミングとは違う形で発生するんです。
実話ベースなので、そういった事が起きます。
え?ここで死ぬの?とか。えええ、こんな状況でも助かったの?!とか。
それが凄く怖いというか、緊張感を与えてきます。
ドス衛生兵が、どうやって心を立て直していったのかを、思わず想像してしまったり。



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彼が筋金入りのカトリック信者だったのは間違いないですけど、
でも・・・その事実が、いったい戦場で、どんな意味を持つのかっていう。
その疑問に、ドス衛生兵も向き合ってしまうんです。
あまりにも地獄のような光景で、私なんかに何が出来るのかと。
どんなに神を信じても、自分の信仰で戦争を終わらせるのは無理で。
それどころか目の前で自分をイジメてた仲間とか、守ってくれた人が
身体をバラバラにしながら死んでいく。そしてそれ以上に
立ち向かってくる日本兵達の、あまりにも惨すぎる死の連鎖。
その中で、自分に何が出来るのか。ここが一番の見せ場だったと思います。
恐らくこの姿を撮りたくて、メル・ギブソンは沖縄戦の撮影に
挑戦したんだろうなとさえ思いました。



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残酷な場面が続けば続くほど、ドス衛生兵の信仰と信念が輝いて見えるという
相乗効果も発生していましたが、極限の中で心を支えたのは何なのか。
それは目に見えないもので、映画と言う形で表現しても
見る側は、感じ取るしかないんですけど・・・自分なりに感じ取れるものがありました。


凄まじい戦場を経験していく中で、仲間達は、こんな状況の中で銃も持たずに
命を賭けて走り回る男が、どれほどの勇気と信仰を持っているのかに気ずきます。
他者の意思を尊重し、自分の意思も信じる。これはアメリカという国家の基本理念です。
メル・ギブソン監督が意識していたかは不明ですけど、この映画によって
彼はアメリカという国の原点に辿り着いていく映画を、撮ったような気もします。












by frat358 | 2017-11-13 01:10 | DVDエラー大嫌い | Comments(0)
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