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3000坪の冒険と、時々音楽すごく映画。たまにサッカー
by frat358
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カルテル・ランド(かなりネタバレ)

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「カルテルランド」 ドキュメント映画

ここ数年、アメリカのドラマや映画を見ていると
やたらにメキシコの麻薬カルテルが登場するので
ちょっと気になってました。
カルテル・ランド(かなりネタバレ)_c0027929_168246.jpg

「悪の法則」

メキシコの麻薬カルテルが絡んだ事件に
悪さを企んだ男が巻き込まれてしまう映画です。
カルテル・ランド(かなりネタバレ)_c0027929_1683710.jpg

「ブレイキング・バッド」

アメリカで大ヒットしたTVドラマで
これもメキシコの麻薬カルテルが頻繁に登場します。
主人公の奥さんの妹と結婚した男は警官で、
メキシコでの捜査で恐ろしい目に遭って
心にトラウマを抱えてしまいます。

カルテル・ランド(かなりネタバレ)_c0027929_1685526.png

「ボーダーライン」

CIAのメキシコ麻薬カルテル殲滅作戦に参加した
女性警官の地獄な日々を追いかけた映画。

映画やTVドラマでのメキシコ麻薬カルテルの立ち位置は、
とにかく最悪にヤバい連中で、主人公を大ピンチに
陥れるような立ち回りが凄く多いんです。
でも日本に住んでいる私には、現在のアメリカ人が
メキシコ麻薬カルテルを脅威に感じていることが
リアルには伝わってきません。
いったい、何が起きているんだろう?と・・・

カルテル・ランド(かなりネタバレ)_c0027929_169229.jpg

麻薬戦争の記事を漁っていた私の心に凄く印象に残ったのが、
とある小話でした。アメリカ人は残酷な事件が起きたと聞けば
なんてことだ。一体どこで起きたんだと心配するけど
場所がメキシコだと聞けば「なんだメキシコか」と言って
まるっきり興味を持たないと。例えばこれが、
日本で起きた事件だったり、場所がカナダであれば
心配して報道を追ってくれるそうです。
でもメキシコだけは違う。どんな恐ろしい事件が遭っても
場所がメキシコだったらアメリカ人は驚かない。
特にメキシコとアメリカの国境沿いは、
何が起きても不思議じゃなくて、それどころか最近では
国境を越えてアメリカの領土まで危険地帯になり、
誘拐、強姦、見せしめ殺し、何でもござれが頻発して
もうなんか、日常化してるので驚かなくなってしまったと。
警察ですか?来てくれますよ。特にアメリカ領土なら
通報があれば警察は来ます。何分後に来ると思います?
90分後に来るそうです;つまり警察が来る頃には
何もかも終わっている。広大な土地の物凄い田舎なので
地元警察は対応できていないようです。
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ドキュメント映画「カルテルランド」は
アメリカとメキシコの国境沿いに住むアリゾナ州のアメリカ人と、
国境から1700キロ離れたメキシコの、ミチョアカン州での現実を
BGMなども鳴らし、演出しながらドキュメント撮影しています。
正義が生まれ、正義が死ぬまでを捉えた怖い映画です。

まずメキシコのミチョアカン州で殺人事件が起きます。
ミチョアカン州は当時、麻薬カルテル「テンプル騎士団」の縄張りで
農業者はテンプル騎士団に上納金を要求されて暮らしてます。
ある日、上納金の支払いを拒否した農業者2人が
テンプル騎士団によって殺され、
その農場で働いていた従業員と、
従業員の家族も皆殺しにされました。
犠牲者は15人で、その中には6歳の少女や
生後三ヶ月の赤ん坊も含まれており、殺し方も残酷で、
画像どころか文章で書くことさえも躊躇するような
恐ろしい殺され方をしています。でもメキシコでは
こんな、とんでもない殺人事件が日常化しており、
当事者達以外は、特に興味さえもちません。
テンプル騎士団って最初の頃は
住民を守る事を約束した麻薬カルテルだったんですけど
ミチョアカン州を完全に掌握すると態度を変えて
上納金を要求したり、アボカドやライム、レモンなどの
農産物や、鉄鉱石の利権も仕切るようになっていきました。
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恐らくこの、メキシコという国では・・・
カルテルに反対するような人物は政治家になれません。
カルテルを逮捕するような人物も警察で昇進しないのだろうと。
メキシコ軍の中にもカルテルと繋がってる兵士が多いようです。
麻薬が生み出す金によって汚職された権力が強固に構成され、
誰も手出しが出来ないところまで、きているようです。
そして住民の、政府、警察、軍への不信感は
とてつもなく大きい状態になっています。
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ミチョアカン州で医者をしているミレレスは、
もはやメキシコで自分の命は保証されていないどころか
死に方を選ぶような状況になっていると考えました。
どうせ死ぬなら戦って死のう。どうせ死ぬのなら
愛する人達を守るために死のう。そのように思い、
銃を取ります。ミレレスはリーダーとしての素質があり、
弁舌が達者だったこと、更にはミチョアカン州で
政府への不信感と麻薬組織への報復心の高まりなどもあって
次々と賛同者が集まり、自警団を結成するに至ります。
(実際はミレレスが参加する前から自警団は在ったようですが、
彼が広告塔になる事でイメージや分かりやすさが増し、
住民達から歓迎されるようになっていったようです)

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自警団のルールは、撃たれた場合のみ、撃つこと。
悪党でも逃げていくならば追わないこと。
映画の中では説明されませんが、手配犯を捕まえても
リンチなどはせず、警察に犯人を渡すこと。
これらがルールになった組織でした。
自警団が存在感を示すようになると、
テンプル騎士団による自警団への攻撃が始まります。
夫が殺されるのを見せられたあとに強姦された女性が
実行犯を名指しし、自警団が犯人逮捕に動きます。
そして、捕まえます。親族を殺された人達が
怒りを抱えて集まってくる。それでも彼らは決して
麻薬組織と同じような人間にはならないと誓い、
犯人を殺さずに警察へ突き出します。しかし・・・
警察は犯人を簡単に釈放してしまう。
それは証拠不十分だからなのか、
警察がテンプル騎士団に買収されているからなのか、
真偽は分かりません。でもこういう事が続けば
住民も自警団も政府への不信感が増大していきます。
そしてメキシコ政府も自警団という存在を
法的には認められないので解散を要求してきます。
ミレレス率いる自警団は、自分達の限界に直面します。
ここから先は実際に映画を見てね;
でも恐ろしい話や恐ろしい映像が沢山でてくるので
耐性が無い人は絶対に見ちゃいけないよ・・・
カルテル・ランド(かなりネタバレ)_c0027929_16115460.jpg

この映画に登場する人物達は、どれもこれも
圧倒的な正義を感じさせる人間達ではありません。
リーダーだったミレレスも家族がありながら
オンナ癖が極めて悪い人物であり、映像はそれさえも
シッカリ捉えています。あんまり書くと完全ネタバレになるので
頑張って伏せているのですが、テンプル騎士団は現在、
かなり衰退しています。ほぼ存在しないに等しい。
でもそれは「テンプル騎士団が弱った」だけの話で
メキシコから麻薬カルテルが減った訳ではありません。

カルテル・ランド(かなりネタバレ)_c0027929_16121128.jpg

こうやって「現場」での現実を映画で体感してみると、
麻薬戦争を終わらせる為の建設的な意見や
メキシコを良い国に変えていく為の具体案が
まるで浮かんでこない事に気ずきます。
凄まじい絶望感を「カルテルランド」を見た人に与えてくる。
最近はアメリカ大統領候補のトランプ氏が
メキシコとアメリカの3000キロにも及ぶ国境に
「壁を作る!」とアピールしていますが・・・
壁を作る?・・・そんなもん、壁に穴を開ければ
自由に入ってきますよね。相手が麻薬カルテルならば
穴を開けるだけじゃ済まないです。
単純に壁を爆破すると思います。彼らは警察よりも
高性能な武器を所持していて、その中には爆薬も在ります。
ひょっとしたらロケットランチャーなども
持っている可能性はあります。たぶん持ってますね;
爆破とか穴を開ける行為なんて、やっていたら見つかって
すぐに捕まるよと思うかもしれませんが、
国境は3000キロも在りますから
全ての壁を監視する事は不可能です。
そりゃあ、ベルリンの壁みたいに都市部で壁を作るなら
それなりに効果もあるでしょう。でも密林みたいな場所とか
見渡す限りに荒野が広がる3000キロの国境線となれば
不法移民も麻薬も、壁を簡単に突破してくるでしょう。
壮大な税金の無駄づかいになること必死です。

じゃあ対抗策として何がベストなのか。
やっぱり、どう考えても、不可能とは思うけど
麻薬を買わない事。これに尽きると思います。
自分は長いこと、麻薬で捕まる人に対して
殺人や強姦に比べれば甘い目で見ていました。
でもこうやって少しでも知る時間を作ってみると、
誰かが麻薬で心地よい気分を味わう為に
生後三ヶ月の赤ん坊が殺されたり、
子供が誘拐されて公開処刑されていて。
正義を貫こうとした人達が家族を失ったり
社会的に抹殺されている。
カルテルが軍隊のように強い武器を持ってるのも
麻薬という売り上げが在るからです。
その悪を支えているのは誰かと言えば
麻薬中毒者なんですよ。どんなに麻薬王が
偉そうな事を言っても、誰も買わなければ
権力なんて持てないんです。
人は弱いから、この問題を今まで
なあなあにしてきたと思いますが、
待ったなしの状況にまで来てしまったと思います。
麻薬を買わないという環境が
アメリカで当たり前になるには
様々な社会問題の解決が必要と思いますが、
中毒者の仲間入りをするという事は、
何処かで誰かがリンチにされている現実に
加担する事になる。どんな事でも光と影がありますが、
メキシコで起きている事は私の道徳心の限度を超えてます。
麻薬はダメだ。心の底から、そう思うようになりました。


by frat358 | 2016-09-03 16:12 | 超ネタバレ映画感想
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