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スライディング・ヘディングシュート2


3000坪の冒険と、時々音楽すごく映画。たまにサッカー
by frat358
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もしもシリーズ

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「パージ」アメリカ映画
ジャケットが恐ろしいので自粛。

「パージ(浄化)の日」
もしも1年に1日だけ、どんな罪を犯しても
罪にならない日が在ったら・・・という映画。
こういう「もしも」という設定の物語は、
作り手が設定を、どれだけ考察できるかによって
リアリティーが変わってきます。
「パージ」は、この点も予算をかけずに
しっかり作られています。例えば
どんな犯罪をしても罪にならないとは言っても
公務員に対する攻撃は禁止になっています。
(公務員が全員死んでしまったら、翌日から
無政府状態になってしまうので禁止なのかなと)
それと、使用しても良い武器は等級が決まってます。
(生物兵器とか核ミサイルはダメですよと)
もしもシリーズ_c0027929_154406.jpg

そして、こんな法律が設定された場合は
どんな人間達が犠牲になるのか、という面も
ちゃんと考察されています。金持ちは自宅を要塞化して
パージの日を乗りきる事が出来ます。
貧乏人は防犯に金をかけられないので狙われます。
最も狙われるのが浮浪者です。つまり・・・
積年の怨みを晴らす日というよりは、
日ごろの鬱憤を晴らす日に成ってしまっている。
パージの日に最も暴れるのは「若い子」なんです。
特に育ちの良い大学生。知識だけは一人前で
経験が欠けている年齢の人間達が、
グループを作って襲いかかってきます。
設定を考察し、広げていくことでリアリティーを与える。
SF脚本では基礎的な事なんですけど、
この部分が荒い作品はツッコミを喰らいまくって
まったく楽しんでもらえない。怖がってもらえない。
なので、一番大切な部分かもしれません。

アメリカという国家は、日本のサムライと違って
武器を没収された歴史が在りません。
サムライは刀を没収されましたが、
アメリカ人は開拓でアメリカを作った。
自分たちが作った国という自負が強い。
その思想には大抵、銃もセットになっています。
パージは単に無政府状態を描写したかった映画というよりは
アメリカという国家の成り立ち、根源に対する
批判、風刺、再考などが込められているのかもしれません。
この映画の中に登場する、パージという法律を
賛美する人達は、狂っているというよりも
心底、自分たちが正しいと思っています。
だからこそ見てて怖いし、それこそが狂気だと思うが。
日本人だと、なかなか感じにくい部分ですね。
理解できない民族にパージの予告を作らせると・・・



こんなアホな予告になってしまいます。

で。
いきなり、いつもの如く話が脱線するんですけど。
私が学生の頃にね、そんなに仲が良い訳じゃないけど
一緒に居ると心地良い友達が居たんですよ。
彼の親は、とある場所で一度も稼動した事がない、
日本で最も無駄な原子力発電に関わっていました。
非常に重要なポストでした。責任者と言っていい。
それは新しい概念で動かす発電だからこそ
上手くいかないんですけど、まあとにかく、もう・・・
事故を散々、起こすし、役に立たないし、
海外では、とっくに白紙撤回された発電方法なんです。
絶対に無理だという結論に達しているのですが、
日本では未だに諦めないで税金が投入されてます。
そんな発電の、非常に重要な役割を担っている人が
友人の父親だったんです。彼の父親も母親も
凄く温厚で、驕りが無くて、優秀で、礼儀正しくて
私は大好きだったんですよ。ところがさ、
仕事が、そういう仕事なのね。それを知った時に
愕然となって。どうしてこんな良い人が
こんな危険で不幸になる仕事をしてるんだろうと。
10代の私は悩んだ訳です。で、時が経って
ようやく分かりました。こういう仕事に就いてたのは
温厚で優秀で驕りが無くて礼儀正しいからなんです。
人柄に問題が無くて責任感が強くて極めて優秀だと、
こういう仕事に誘われる機会があるんですよ。
そしてその仕事は、事故さえ起きなければ
素晴らしい環境なんです。とにかく金に困らない。
家族が金銭的に望む事を全て実現できる。
ところが事故が起きると大変な事になる。
批判的だった人達は一斉にバッシングを始めるし、
普段は見て見ぬフリをしてる無関心な人達まで
ボロクソに言ってくる。それらの批判はね、
悪い人なら気にしないんですよ。
でも責任感が強くて良い人だと、重く受け止めてしまう。
私も中年になって、ようやくそういった構造が
理解できるようになりました。
もしもシリーズ_c0027929_1583176.jpg

なんでこんな話を書いたかというと、
「パージ」の主人公は職業が防犯でね、
パージという新しい法律で儲けた人なんです。
エリートなんですが以前は金銭的に困窮していて
パージという法律が作られたからこそ、
防犯グッズが飛ぶように売れて豪邸を手に入れた。
主役も、主役の家族もパージ法には道徳的な意味で
反対している人なのですが、この法律のおかげで
豊かな暮らしを手に入れている自覚がある。
だからこそ、生活の中に不協和音が在りつつも
見て見ぬフリをして生きている人達です。
そんな彼らが迎えた「パージの日」・・・
鉄の扉で自宅を完全防犯していたのに、
殺されかけている浮浪者に同情して、
多感な時期の息子が扉を開けて浮浪者を招き入れてしまう。
道徳的には息子が正しいのですが、父も家族を守りたいので
知らない男を家に入れるなんて認められない。
だいたい、その浮浪者が善人だという保証も無い。
見て見ぬフリをしていた事が決断を迫るとき、
裕福な家族を築いた父は、どうするのか。
この点がクライマックスだと思います。
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後半になるとアクションが多くなるんですけど
展開が、ちと・・・ぬるいです。
アクションのオチが毎回同じっていうのが・・・
1回、2回までは構わないけど3回、4回ってなると
さすがに都合が良すぎるよねーっと;
ラストも、ぬるいです。突っ込んでいった割には
あまり回収できていません。
それでも見ている人には沢山の考える機会を
この映画で与えていると思うし、それが一番大切なので
まあ、良しとします。
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主演はイーサン・ホーク。ここ数年で
売れないミュージシャンの父親を演じたり
時空を飛び回る警察を演じたり
今回は防犯で儲けたエリート会社員。
役の幅が広すぎて、見ているほうは混乱します;
10代の頃から映画界に関わっているベテランですが、
予算が在るかどうかよりも、挑戦作に惹かれるようで
少し風変わりな映画を好んで仕事を受けている印象。
大御所なのに威張らず、現場では常に全力の仕事をするので
業界からも評判が良いようです。第二のピークを迎えた
イーサン・ホークの快進撃は、今後も続くと思われます。
by frat358 | 2015-11-29 15:14 | DVDエラー大嫌い
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