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スライディング・ヘディングシュート2


3000坪の冒険と、時々音楽すごく映画。たまにサッカー
by frat358
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イヤなものはイヤなのじゃ。

イヤなものはイヤなのじゃ。_c0027929_2331035.jpg

「のぼうの城」を劇場で見ました。
コメディ路線だけで突っ走るかと思いきや
残虐な描写も多くて、観客席からは
驚く声も聞こえたり。豊臣軍も含めて
人物が魅力的なので、もっとそこを
見たかったなと思ったり~ですが、
上映時間が2時間を越える大作です。
映画の最大の見せ所は
石田三成が行った「水攻め」なんですけど
日本は丁度、のぼうの城の公開予定時に
東日本震災を経験する事になりました。
日本中、いや世界中の人々が
真っ黒な海水に田んぼや人が飲まれていく映像を
もう見たくないと思うほど見る事になり。
その直後に水攻めが売りの「のぼうの城」が
公開を待つ状態になっていました。
映画に出てくる水攻めの映像は
震災前に作られたものらしいんですけど、
黒い水が城下を飲み込む映像は
まさに震災の津波そのものです。
あの光景を見たわけでもないのに
あの光景としか思えないような映像を、
震災前に「のぼうの城」のスタッフ達は
作ってしまった。とんでもない悲運であり、
水に飲まれる人々の映像を消したりなど
配慮もしているようなのですが、
世界中の誰に見せても、あの津波を
誰もが思い出すとおもいます。
それくらい、物凄い映像です。
私などは同時に、あの時代におこなわれた
「水攻め」という戦略に気分が悪くなりました。
田んぼがメチャクチャになりますから。
水攻めは海水じゃないけどさ、
それにしたって大きな石が流れ込んできて
長年培われた田んぼの土に土砂が混じり、
先祖から受け取ってきた土壌が
ボロボロになる戦略ですよ水攻めは。
とても百姓出身の秀吉が実行したとは
思えないような残酷戦略だと感じました。
やっぱりどーしても秀吉は好きになれんという思いが
更に強くなってしまう皮肉が私には起きましたが;


でも長く長く公開を遅らせたのぼうの城が
ようやく公開に至っても、水攻めのシーンは
ネガティブに批判される事がなく、
壮大なアクションシーンや
野村萬斎さんへの評価はうなぎ昇り。
最悪の公開環境でありながら
観客達を満足させたエネルギーの動力源は、
個人的には原作の力だと思います。
この作品には弱い人間達の為に憤怒し、
命さえも投げ出す覚悟に満ちて
武士の鑑のような男でありつつも
まるで武芸の才能がないという
不思議な主人公、のぼう様が出てきます。
そして、同じような人間性を持ち
同じように武芸の才能がない
戦国史上、最も嫌われた石田三成が
のぼう様の相手として出てきます。
2人は似ているのに、2人に待っている運命は
雲泥の差です。そういった視点から
この作品を見るのも面白いですね。

のぼう様率いる成田家の忍城は、
恩のある北条家に加担する事で
豊臣秀吉を敵に回す事になりました。
では北条家が豊臣家に逆らった理由は
どんな事が考えられるでしょうか。
単純に考えれば国力が違いすぎますし
マトモにやりあって勝てる相手ではない。
それでも秀吉には恭順せず対立構図を
ひたすらに続けた北条家。
徳川、伊達と結んで東日本で連合し、
秀吉打倒を狙っていたのは確かなようだし
確かにそれが実現すれば秀吉にとって
大きな脅威になった事でしょう。
でもそんな事を狙っていた理由は何でしょうか。
一体どんな理由で天下を狙っていたのか。
なぜ秀吉には頭を下げようとしなかったのか。
諸説あるのですが、最近有力なのが
「年貢」だったのではないかという説です。
この説は文献の発見でNHKでも
歴史番組の特集が組まれたりしたのですけど、
秀吉が掲げた年貢(税金)の割合だと
凶作や疫病などで農民に被害が出た場合は
充分な生活を与えられないという計算を
北条家がしていたのではという仮説があります。
元々、北条家は地域領民に善政を敷く為に
決起したような成り立ちがありますし、
秀吉と戦った時に北条家の実権を握っていたのは
北条氏政ですが、彼の祖父にあたる北条氏康は
優れた政治家だった事でも知られます。
北条家の北条家たる所以は、農民を苦しめない政治を
常に行っていくというところにありました。
北条家は自身の領地で飢餓が発生した時には
年貢を免除したことさえあります。
北条家は豊臣軍との戦闘中に
小田原城に周辺の領民も避難させていた為、
戦いが長引けば長引くほど
民衆に負担がかかる事も
危惧していたと考えられます。
北条家の敗北は様々な歴史ドラマを見ても
大きく取り上げられる事がなかったり、
北条氏政のリーダーシップ不足などが
視点として取り上げられやすいのですが、
私には北条家って自分達が自分達である為に
戦っていたような気がするのです。

間違ってると思うなら首を縦に振らない。
相手は日本一の強者だけれど、
いやだからこそ、最も強い相手が
どうしても納得いかない事を
自身に呑ませようとするからこそ、
絶対にイヤだ。私だけはイヤだと
かたくなに拒絶する、のぼう様。
不真面目で不器用だけど生き方に芯が在る。
もし北条家や成田家が
自分が自分で在る為に反発したのなら、
尚更痛快だし、暖かい話でござる。

我身今 消ゆとやいかに おもふへき 
空よりきたり 空に帰れば
            北条氏政 辞世



by frat358 | 2012-12-11 02:41 | DVDエラー大嫌い
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